いつも心に裕三を– Motto –

※サイト上での読みやすさを考慮し、原文に段落・一部改行を加えています。

ものまねが好きだ

ものまね研究会などという団体を主催しているのだから言わずもがなではあるのだが。

テレビでものまね番組が放送される際には、リアルタイム視聴と録画を共に欠かさないし、「好きな芸人は?」と尋ねられると「団しん也、清水アキラ、ノブ&フッキー、なかじままり、マルセ太郎」と、ものまね芸人の名前ばかりが挙がるほどにものまねが好きだ。ものまねを見にわざわざ大阪から東京まで出張ったこともある。

私は一体なぜものまねにはまってしまったのか。私をものまね道へ引きずり込んだのは何者か。犯人は明確だ。

グッチである。裕三である。「ハッチポッチステーション」である。

グッチ裕三主演の伝説的番組「ハッチポッチステーション」こそが、私をものまね好きへと教育したのだ。

「ハッチポッチステーション」を知らない方のために番組の概要を説明しておこう。1995年から2005年までNHK教育テレビで放送された伝説の子供番組である。滅多に電車が来ない駅「ハッチポッチステーション」を舞台に、グッチ裕三演じる「グッチ (※1)」 が、パペット人形のキャラクターたちと楽しく過ごす日常を描く。グッチ裕三の芸の真髄を100%余すことなく視聴者にぶつけ切ったこの番組は、日本中の子供たちとその保護者を虜にしたのだ。

「ハッチポッチステーション」が人々の思い出話の俎上に上がる時、必ず誰しもが語るコーナーがある。「WHAT’S ENTERTAINMENT?」だ。グッチ裕三が海外アーティストのパロディキャラクターに扮し、洋楽と童謡をミックスしたコミックソングを熱唱するコーナーである。

マイケル・ハクション(マイケル・ジャクソン)は「やぎさんゆうびん~今夜はビート・イット」を歌い踊り、アースウィンド・アンドーナッツ(アースウィンド&ファイヤー)は「かあさんのうた~宇宙のファンタジー」を歌い上げる。KISSA(KISS)は「おはなしゆびさん~デトロイト・ロック・シティ」を熱唱し、キリツ・レイ・チャールズ(レイ・チャールズ)は「手を叩きましょう~旅立てジャック」を絶唱する。

このような抱腹絶倒のパロディものまねが、放送期間を通してなんと50曲弱も披露されたのだ。公共の電波をジャックして自分の趣味をやりたい放題に披露し続けたグッチは、コミカルな歌と踊りでキッズのハートをつかむと同時に、洋楽好きの保護者たちをも爆笑の渦に巻き込んだのだ。

無論、番組本来のターゲットであるキッズの多くはマイケルもKISSも知るはずはなく、元ネタは一切分からないままに、ただ「面白いオジサンが面白いことをしている」ことを楽しんでいただけで、グッチのネタが「ものまね」であることは理解していなかった。私は、洋楽好きの母親に「ハッチポッチ」でのグッチのネタを逐一解説してもらっていたので、これが「ものまね」であるということは、幼いながらにうっすらとは理解していたのであるが。

「ハッチポッチ」が、私と「ものまね」のファーストコンタクトであることは疑いようがないのだが、まだ幼少の私は、今の「ものまね狂」と言えるほどのものまねへののめりこみは見せていなかった。

私が本格的にものまね愛好家へと変貌するきっかけとなったのは、「ハッチポッチ」放送終了から6年後、2011年11月21日、大阪城ホールにて行われたエリック・クラプトンのライブであった。会場が暗くなり、エリック・クラプトンが登場し、会場が歓声に沸く。私の目に映ったのは、紛れもなくあのロックスターのエリック・クラプトンであった。しかし、クラプトンの姿に私の目はもう一人の男を見ていた。「エリックかけブトン」だ。かつてグッチ裕三がハッチポッチで披露したパロディキャラクターのエリックかけブトンが、私の網膜においてクラプトンに重なったのだ。幼い頃に見たきりのものまねを、本家を見た際に突然思い出したことに私は驚いた。それほどまでに自分の潜在意識にものまねが刷り込まれていたのかと。

そして、2013年3月11日、私は再び大阪城ホールにいた。ラテン・ロック・バンド「サンタナ」のライブを見るためだ。ライブが始まりリーダーのカルロス・サンタナが登場する。彼の姿に私は「YONTANA」を見た。言うまでもないが、グッチが「ハッチポッチ」で披露したサンタナのものまねだ。クラプトンにサンタナ、彼らを見たときに幼少の記憶が呼び起こされる。

私は確信した。「ものまねはすごい」と。

小さい頃に少し見ただけのグッチのものまねが、脳裏に甦るというのは、自分の潜在意識に如何にグッチ裕三が強烈に焼き付いていたのかを示している。気づかぬ間にこれほどに自分はものまねに影響を受けていたのか。そう気付いた時、私はものまね愛好家へと変貌していたのだ。幼き日に見たグッチ裕三が、時空を超えて私をものまねマニアへと変えたのだ。

今でも私は、洋楽を聞くたびにハッチポッチのパロディキャラクターたちを思い出す。QUEENを聞けばGUEENを、マーヴィン・ゲイを聞けばマホービン・ゲイを。グッチ裕三のおかげで、洋楽好きに、そしてものまね好きになった。このような人々は私以外にもたくさんいるはずだ。ハッチポッチ放送期間中に幼少期を過ごした当時のキッズは、皆がグッチを心に留めている。私のようにきっかけさえあれば、皆がものまね好きへと開眼するだろう。ハッチポッチを楽しみ、グッチに薫陶されたキッズを私は「グッチチルドレン」と呼ぶ。我がものまね研究会の部員は、皆がグッチチルドレンである。

全てのゆとり世代は、グッチチルドレンであり潜在的ものまねマニアなのだ。洋楽を聞きハッチポッチを思い出す者は、誰しもが心に一人の裕三を住まわせている。その心の中の裕三が我々をものまねへと導くのだ。

「いつも心に裕三を」

この言葉がものまね研究会の標語であり、全てのゆとり世代を結ぶ合言葉なのだ。

※1 この番組に登場する「グッチ」は現実世界のグッチ裕三とはノットイコールであり、あくまでもグッチ裕三が演じる「グッチ」というキャラクターである。メンチカツをステマしない。

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いつも心に裕三を

2017年10月25日
関谷大陸


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